かがなべて

言葉遊びと、毎月の歌仙など

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芭蕉の館の玄関 いつも、活けてあるお花がきれい

歌仙桐一葉の巻 初折 裏

さて先月は、月の後、無季の句が続きました。トランクが出て、旅への誘いがあったので、今月は、その続き。冬の旅ですね。

一句目 冬うららビルを映してビルの窓   正藤

  あまり旅って感じでもないですが、まぁ人生は旅なり、と言いますしね。「冬うらら」という言葉がめずらしい。

 

二句  焼藷割れば湯気まで甘し  西

 

ビルの谷間の焼き芋屋さん。美味しそうです。

 

三句 そろそろと噴火しそうな山の神  弘美

 

 ははは。これは恋の呼び出しなんでしょうか。山の神様の地雷を踏んじゃったんですね。うう怖いです。

四句  いつもと違うマニキュアの色  佐藤

 

  これもある意味怖い。いつもと違うマニキュアの色を見せつけられる恋人の心境を思えば。こわい。

 

五句 目の合えば重ねるグラス星涼し  笹次

  夏の句をお願いしてほっとしました。仲良くグラスを重ねているご様子です。夜景の見えるレストランの光景でしょうか。

 

六句目 他人の恋の嘘っぽく聞く  弘美

 

さすが恋句の巧者 弘美さんです。この方の恋の句は毎回さえわたっていらっしゃるんです。たしかに恋する人は傍から見たらおかしい、というか・理解不能というか。ちょっとやそっとでは嘘っぽく聞こえてしまうのが恋というもの。

 

さて来月は初折も後半に入ります、楽しみです、。

 

 

連句の部屋 歌仙「桐一葉」の巻

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立秋も過ぎ、暑さもピークを過ぎた八月、新たな歌仙がはじまりました。


芭蕉の館のお庭を眺められる部屋に、紫深い鉄線の花。きりっとした花容が涼しげです。

まずは発句


 桐一葉きのふと違ふ今日の風  斉藤


古今集秋の部

 秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる  藤原敏行

の歌のとおり、秋風の音には独特のひびきがあります。気温が高くても秋の風だとちゃんとわかりますね。そして、「桐一葉落ちて天下の秋を知る」は、淮南子かなんかのことわざですね。季節の巡りを知らせてくれる先駆けのものを二つも並べて、今日という特別な日に挨拶してくださったのでしょう。

脇は
  秋の蛍の落ちし辺りを  橋本

 暗い付け。

第三句  うす雲を透し明るさある無月   正藤


 暗い付けを、無月といっても雲を透して明るさが見えますね、とやんわりフォローしてくださいました。さすが巧者。


第四句
    草の穂絮の湖畔に揺れて  平井


湖畔に出て、秋風の草の穂の揺れるのを見る。月を眺めるそぞろ歩きのついでかもしれません。景色が変わりちょっと気分も変わりました。

第五句  人声の近づいて来る船溜まり  中江

琵琶湖の、ボートやヨットなどの繫留されている
桟橋が目に浮かびます。人間が現れて物語が展開しそうです。

六句目

照らすライトに浮かぶトランク   平井


港の光景になったようですね。桟橋か甲板か。ライトに浮かぶ使い込まれた古いトランク。旅への誘いが出たところで、今月、の「桐一葉」の巻初折は終わりました。どんな旅になるのか楽しみです。