歌仙「桐一葉」の巻
今月は初折裏の七句めから。そろそろ月の出るころ。
七句目 お薬師の九輪にかかる冬の月 中江
お薬師様と呼ばれるお寺は各地にあります。ここ山中温泉にもあります。その塔の頂きの九輪にかかる冬の月。煌々と冷え寂びて。 オーソドクスな冬の句。
八句 散るものもあり咲くものもあり 正藤
いかにも連句の遣り句らしい、さらりとつなげる一句。
九句 飛び石を一つ飛ばして着地して 佐藤
前句の気分を受けて感覚的に付けた無季の句。うまい。さて、そろそろ花の定座に向かって春の句をお願いしましょうか。
十句 青きを踏みてこれからのこと 中江
花の前、初春の季節感にあふれたきれいな付け。前句の着地した後の足元に目をやって、それから未来へ目をやる。春は始まりの季節ですものね。
花の座 長堤の大島桜日のかげり 笹次
大島桜は日本の桜の原種の一つです。固有種です。葉も大きく、樹高も高めで野趣がありますね。長堤は、一読、墨田川の墨堤か、と思いましたが、大島桜の名所の堤かもしれませんね。文字通り丈高い花の句。
十二句 師の忌を修す春雨の径 正藤
「百名山」で有名な深田久弥は加賀市の出身ですが、その忌3月21日を毎年、有志の方々が修していらっしゃるのだそうです。もう49回だそうです。詩を思いつつ辿る春雨の小径。思いの深いものがあります。
さてこれで初折裏も終わり来月はいよいよ名残にはいります。