かがなべて

言葉遊びと、毎月の歌仙など

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お茶の花 十月の連句

歌仙「桐一葉」の巻

今月は初折裏の七句めから。そろそろ月の出るころ。

 

七句目 お薬師の九輪にかかる冬の月  中江

お薬師様と呼ばれるお寺は各地にあります。ここ山中温泉にもあります。その塔の頂きの九輪にかかる冬の月。煌々と冷え寂びて。 オーソドクスな冬の句。

 

八句 散るものもあり咲くものもあり  正藤

 

いかにも連句の遣り句らしい、さらりとつなげる一句。

 

九句 飛び石を一つ飛ばして着地して  佐藤

 

前句の気分を受けて感覚的に付けた無季の句。うまい。さて、そろそろ花の定座に向かって春の句をお願いしましょうか。

 

十句  青きを踏みてこれからのこと  中江

 

花の前、初春の季節感にあふれたきれいな付け。前句の着地した後の足元に目をやって、それから未来へ目をやる。春は始まりの季節ですものね。

 

花の座 長堤の大島桜日のかげり  笹次

 

大島桜は日本の桜の原種の一つです。固有種です。葉も大きく、樹高も高めで野趣がありますね。長堤は、一読、墨田川の墨堤か、と思いましたが、大島桜の名所の堤かもしれませんね。文字通り丈高い花の句。

 

十二句 師の忌を修す春雨の径  正藤

百名山」で有名な深田久弥加賀市の出身ですが、その忌3月21日を毎年、有志の方々が修していらっしゃるのだそうです。もう49回だそうです。詩を思いつつ辿る春雨の小径。思いの深いものがあります。

 

さてこれで初折裏も終わり来月はいよいよ名残にはいります。