歌仙「桐一葉」の巻 十二月
名残の裏も後半です。先月は恋が終わったところ。
今日は七句目から。秋の句をおねがいしました。
霧晴れて山の全容巌襖 弘美
巌という難しい漢字が峩々たる山容にふさわしい。正統派の写生句。次は、そろそろ月に出てもらいましょう。霧が晴れたのがちょうど月の呼び出しになりますね。
櫓の音かすか月天心に 笹次
前句の漢詩的な雰囲気をとらえて、何とも風流な月見の舟。李白の「月下独酌」の詩などが連想されます。西湖か洞庭湖にでも、船出する心持になりました。それでは秋の句もう一つ
威銃(おどしづつ)ムンクの顔のようになる 佐藤
ハハハ、これはこれは!漢詩的風流三昧から、おどしづつ(稲穂を鳥などに食べられないように空砲の音を出す仕掛け」の音にギャッと驚いてムンクの「叫び」のような顔になっちゃったとは。
ムンクの顔というと画家のひげもじゃの自画像を思い浮かべる人より、「叫び」のあのポーズと顔を思い浮かべる方が多数派でしょうから。「ムンクの叫びの顔になる」ではややせつめいてきになりますし。「ムンクの顔」で、いただきました。次句は無季で。
遠峰々のどこも動かず 弘美
実は打越の巌衾の句とイメージが似ていて、あららとおもったのですが、威し銃に人の心は縮みあがるけど、山は泰然と動かないというのがおもしろいと感じていただいてしまったんです。威し銃の音が峰々に谺してゆくようで。
綿虫の羽休まずに休まずに 佐藤
ここ山中で今年は綿虫が多いそうです。よく見ると必死で羽を動かしているそうです。泰然と動かないものから、必死で震え動く者へ。
名残の表最後の句は冬の七七
サンタがためす回転木馬 平井
サンタさんが回転木馬に試し乗り!楽しい光景ですね!
実際、係員さんがサンタの衣装をつけたりしていることもありますでしょうね。現代の十二月らしい光景。
歌仙も来月は名残の裏。満尾も間近です。
それではメリークリスマス & ハッピーニューイヤー!