ようやく春めいてきた山中温泉。名残の表。二句目に恋の呼び出しがありましたのでうけてたちましょう。
緑陰に誘ひ話の続きなど 中江
さりげないけれどなかなか。枝影の揺れる中に「お話の続きが…」などと誘う。なかなかの恋の巧者の句です。
祭の輪へと吸ひ込まれゆく 佐藤
夏祭りはデートの鉄板コースですが、さりながら、踊りの輪へとふらふら引き込まれるのは、だれしもの事ですから、恋と云うにはやや淡いかな。
夏の恋の後は、無季で恋の句お願いしましょう。
昼下がり逢ふてはならぬ人と逢ひ 平井
前句、淡いと言ったら今度はドラマみたいな苦しい恋の句。こういう時、季語が欲しくなりますよね。例えば、「片陰や逢ふてはならぬ人と逢ひ」とかだとぐっと陰影が濃くなりますし、「花蘇芳逢ふては…」と花など添えるのもまた一興ですが。無季にするためにご苦労なさったのでしょうね。
誕生石のルースのままに 橋本
リングにもならず、手元に残るその人の誕生石。この辺で恋も終わりといたしましょう。次は秋の句
天空を真二つにして星流る 佐藤
雄大な景色。夜空をよぎるのはかなりの大きさの隕石でしょうね。前句の宝石はラピスラズリだったのかな、金の散ってるやつ。
白山の秋その只中に 中江
山の上で見る空ってさぞきれいなことでしょうね。美しい秋のその只中にいる。ハー、山登りできる方が羨ましい。
さて、先月も危うく月の出ない初折になるところでしたが、名残の月もそろそろでてほしい。しかし、星がすでにでているのでここはあえて「月」の字のない月の句を所望してみましょうか。
十三夜 十五夜 玉兎 初魄 嫦娥 桂の何とか、っていうのもあった。いろいろありますよ。