かがなべて

言葉遊びと、毎月の歌仙など

芭蕉の館連句会十一月「菊たけなはの巻」

紅葉の盛りの芭蕉の館。今回は初折の裏、三句めからです。春の句

 

薄氷の幾何学模様昨夜の風  正藤

 薄氷(うすらひ)は初春の季語です。夜の間水辺の氷が風向きによって厚みを増したりゆるんだり、亀裂が入ったりするのでしょうね。まだまだ寒いけれど薄くなった姿に春のけはいをかんじる。

 

しゃぼん玉吹く君の声入れ   元田

 そろそろ恋の句も欲しいというところで、春のシャボン玉。きれいで儚いその中に君の声が入っている!すばらしい。ふく息と一緒に小さく漏れた声でしょうか。あまりにも感じやすくて壊れてしまいそうな恋ですね!

 

モネの池ひと巡りしていとほしき  佐藤

ジヴェルニーの池はかなり広いですよね。どうしても夏の睡蓮の咲くころを想像してしまいますが、文字の上では無季の句。夏の恋の思い出か…。

大急ぎで季節は秋に。

 

 皆既月食<あか>を残して   井上

 

この<あか>は偏は赤で作りは者、という漢字です。茶色っぽいレンガ色がかった赤の意です。私のおバカなPCでは出ないけど。

先日の皆既月食見事でしたね!

 

時雨るやおか借り申すぞ寺庇    正藤

 

古寺に雨宿り、昔物語なら幽霊でも出そうなところですが、作者は時代がかった表現にユーモアを込めて、時雨の寺というシチュエーションを楽しんでいらっしゃるようです。

さて来月はいよいよ初折の裏もおしまいになる運びです。花の座が待っています。