かがなべて

言葉遊びと、毎月の歌仙など

初歌仙

f:id:orcamike:20200329110237j:plain

芭蕉の館で初歌仙

加賀市山中温泉芭蕉の館での初歌仙。清書したのでここに載せておきます。平成26年の事です。山中温泉への挨拶に始まっています。.

歌仙湯の香の巻

山中や湯の香変わらぬ青葉闇  おるか

古き館につどう夏服     上出

木地を挽く若き女の腕細く  笠原

雨戸を揺らす川風の音  平井

中腹に五重塔を月はるる  笹次

カラコロカラと蓮の実の声  平井

初折裏

黄昏の欅並木に鵯群れて   笠原

マナーモードに間髪入れず   上出

瀬戸内の思い出の島巡りつつ  新津保

汀に寄せし貝殻拾う    上出

初霰踏みし仕草も幼めき   紺谷

ミケも喜ぶ炬燵を出して  上出

夜もすがら遺愛の軸を掛け替えし  笹次

みつる月影雲間に隠れ    新津保

庭下駄の鼻緒の湿り虫しぐれ    紺谷

松茸狩りに出かけてみれば   西

花吹雪団十郎に成りきって  上出

蝶の屍を拾う人無し  西

名残表

ようように日は傾きて遍路道  橋

上方からの便り届きて  平井

吹けば飛ぶ木橋道明が淵繋ぐ  上出【道明が淵は山中鶴仙渓の名所)

夕立ちありと駆けこむ酒屋  上出

夏惜しむからくり時計みあげつつ   佐藤

昭和の男次々逝きし  上出

砂嵐地上に銃火絶ゆるなく  橋

みゅきの歌も心懐かし   平井

ウキウキと新幹線の話など  中江

フレアスカート風におどるよ  紺谷

鉄塔にひっかかりたる冬の月  橋

ひざしにゆるむ雪吊の縄   中江

名残裏

迷い騎士袋小路もまた楽し  佐藤

ピアノソナタの窓より聞こえ  上出

山笑うひらがな多き孫の文   中江

病院の脇老木の白さくら    新津保

木漏れ日おどる芭蕉の小径  松浦

 

初めてに歌仙なので読み返すとややぎこちなさもありますね。

すべて出勝ち、句を十分ほどでその場で作っているので土地の風物や時事などもなつかしい。北陸新幹線の開通の年でした。

 

歌仙 雛の家 の巻 三月

f:id:orcamike:20200317153838j:plain

歌仙を巻きつつ書いています

先月会場の都合で初折五句目「夏の月」で終わっていた歌仙。

まずは初折の最後、六句目

 

コロナに揺らぐ列島極暑  正藤

 

うう、熱いですね。夏にはパンデミックも収まっていると良いのですが。時事を読み込むのも、実際に顔を集めて巻く歌仙の愉しみの一つです。

さて初折の裏へまいります。

 

人声は国境線の辺りより  平井

 

世界的な新肺炎の蔓延という状況ををおさえた付け。陸続きの国境線は管理も大変なことでしょう。ヨーロッパはペストなどパンデミックの経験があるからか対策も厳しいですね。さて次の句は、

 

港の灯りほつほつ点る  佐藤

 

前句の光景から旅の気配を抽出して抒情的に持ってきました。つぎは秋の句

 

散居村つなぐ稲穂のたおやかに   中江

 

散居村の光景は美しいものですね。田んぼの中に屋敷林を持つ立派な農家が一軒一軒散在する、ちょっと描いてみたいような景色です。

たおやか、ということは、まだそれほど身が入って重くなり枯れ色になってきていない微妙な時期の稲なのでしょう。

 

古酒の大壺空っぽにして  佐藤

 

新酒が出る前に古酒を片付けねばならぬ、ともったいらしく大酒を飲んでいる。おもしろいです。富山県の穀倉地帯の豊の秋を詠んだ前句を受けて、実りの秋に新酒を待つ気分良い付けですね。次はせっかく秋なので月の句を所望しました。

 

正座して文机低し居待月  正藤

 

格調ありますねー。正座して文机に月を待っていらっしゃる。文机が低い、というのも時代を感じさせます。明治文豪の雰囲気ですね。

正岡子規の机も低かったな。

 

銀杏黄葉へ日の移り来て  中江

 

秋の日らしく明るく静かな光景。銀杏はあまり普通のお家の庭にはありませんね。前句の格調の高さに似合うかと思います。加賀市深田久弥 山の文化館の

庭にも大きな銀杏があって紅葉がそれは見事です。

これで初折の裏の半分まで来ました。来月はどんな展開になるか楽しみです。

 

 

 

f:id:orcamike:20200222131937j:plain

歌仙「雛の家」の巻

二月の雪の日、会場の芭蕉の館のお部屋には豪華な雛飾りがしつらえてありました。

冬の薄墨色の景色を見てきた目には色鮮やかな春の魁のようで一入嬉しい心持がします。

さて、新たな歌仙を巻き始めました。まずは芭蕉の館館長さんの一句

 

幾年を一座つどいて雛の家  平井

 

この館で、連句の会を始めて何年になるのでしょう。けっこう長く続いてます。御挨拶の一句。

 北窓開き風と光と  西

冬の間、固く締めきっていた北の窓を開くとさっと新たな息吹が入ってきます。そういう風に、一座も集い新たな風や光もはいって来ますね、というさわやかな付け。

 

惜春のふるさとの道なつかしく  中井

 

惜春と最初に言ってますから、なつかしくまで云う必要はないかなとは思いますが、春の終わりの気分としていただきました。

 

夕暮れ色の皮手帳買う  橋本

 

皮表紙の手帳を皮手帳というのは日本語としてどうでしょうね。次は夏の句

 

米をとぐ水存分に夏の月  律子

 

夏の気分ですね水に触れているの気持ちよくざぶざぶと思う存分水を使うその上に、夏の月が涼し気にかがやいている。夕暮れから夜になりました。

さて来月はどんな展開になるでしょう。楽しみです。初折の表最後は夏の句もう一句かな。

 

 

 

  

f:id:orcamike:20200123223907j:plain

歌仙桐一葉の巻 満尾

名残の裏に入りました。あまり重くならず、さらさらと続けて余韻嫋嫋と終わるのがたしなみなんだとか。

さて、名残の表は冬の句

サンタがためす回転木馬  平井

という愉しい句で終わりました。名残の裏一句目は無季の句をお願いしました。

 

贈られて使わずじまい食器類  西

 

作者は最近、四国徒歩遍路を終えられたところだそうです。素晴らしいですね。

サンタさんといえばプレゼント。しかし戴いても使い道に困るものもある。わかる…。

次も無季の短句で、

 

 朝の厨に鼻歌聞こえ  中井

食器→厨,とやや縁の近いものではありますが、サラッと次へ運ぶことにしました。

 

たんぽぽに幼なごころのはちきれて  笹次

 

子供のころは蒲公英摘んだり絮を吹いたりするのは楽しみでしたね。さて次も春の句。

 

うららかなれば夫誘いましょ  佐藤

 

かろやかでいいですね。素晴らしい。さて次はいよいよ花の定座です。

 

行列の薄墨桜とおく見て  平井

 

誘いあって出かけた先は行列の向こうの桜でしたか。有名の桜の周りはどこでもこうですね。道は渋滞、遠目に実ながら行列にならぶ。さて揚句は

 

 盃かさね春惜しみたる  笹次

 

李白の詩を思い出しますね。両人対酌山花開一杯一杯また一杯…

取り立てて珍しい句ではありませんが花の後の気分はこのようなものかな、と。

これで昨年八月に始まった桐一葉の巻も、めでたく満尾となりました。

文台を引き下ろせばすなはち反古なり。立ち葵に赤とんぼの図もこれで巻き納めです。

 

 

f:id:orcamike:20191217210608j:plain

かわいい藪柑子の盆栽

歌仙「桐一葉」の巻  十二月

  

名残の裏も後半です。先月は恋が終わったところ。

今日は七句目から。秋の句をおねがいしました。

霧晴れて山の全容巌襖  弘美

巌という難しい漢字が峩々たる山容にふさわしい。正統派の写生句。次は、そろそろ月に出てもらいましょう。霧が晴れたのがちょうど月の呼び出しになりますね。

櫓の音かすか月天心に  笹次

 

前句の漢詩的な雰囲気をとらえて、何とも風流な月見の舟。李白の「月下独酌」の詩などが連想されます。西湖か洞庭湖にでも、船出する心持になりました。それでは秋の句もう一つ

 

威銃(おどしづつ)ムンクの顔のようになる  佐藤

 

ハハハ、これはこれは!漢詩的風流三昧から、おどしづつ(稲穂を鳥などに食べられないように空砲の音を出す仕掛け」の音にギャッと驚いてムンク「叫び」のような顔になっちゃったとは。

ムンクの顔というと画家のひげもじゃの自画像を思い浮かべる人より、「叫び」のあのポーズと顔を思い浮かべる方が多数派でしょうから。「ムンクの叫びの顔になる」ではややせつめいてきになりますし。「ムンクの顔」で、いただきました。次句は無季で。

 

遠峰々のどこも動かず  弘美

 

実は打越の巌衾の句とイメージが似ていて、あららとおもったのですが、威し銃に人の心は縮みあがるけど、山は泰然と動かないというのがおもしろいと感じていただいてしまったんです。威し銃の音が峰々に谺してゆくようで。

 

綿虫の羽休まずに休まずに  佐藤

 

ここ山中で今年は綿虫が多いそうです。よく見ると必死で羽を動かしているそうです。泰然と動かないものから、必死で震え動く者へ。

名残の表最後の句は冬の七七

 

サンタがためす回転木馬  平井

 

サンタさんが回転木馬に試し乗り!楽しい光景ですね!

実際、係員さんがサンタの衣装をつけたりしていることもありますでしょうね。現代の十二月らしい光景。

歌仙も来月は名残の裏。満尾も間近です。

それではメリークリスマス & ハッピーニューイヤー!

 

 

 

 

 

f:id:orcamike:20191124105116j:plain

紅葉時雨の歌仙

歌仙「桐一葉の巻」

歌仙もいよいよ名残に入りました。

先月は花の座の後

師の忌を修す春雨の径  正藤

と思いの深い句で終わりました。

名残の表初句は

かきわけて登り登りて砦址  平井

 

春雨の径を辿るうちについに山まで登ってしまった!

砦址は山中温泉の奥、一向一揆の砦址を探索なさってた折りのことだそうです。熊の出そうな道なき道だとか。それほど高くはないけれどさすがに見晴らしのよい要害の地だそう。このあたりは一揆の跡地や、戦国時代の山城など、埋もれた史跡の多い地域です。さて次の句は

 

安宅を舞える夢のまた夢  笹次

兵どもが夢の後。謡曲「安宅」は悲劇のヒーロー義経陸奥への道行きの曲。砦址には名も知られないもののふの妄執が残っているのかもしれません。砦址から夢幻能へ。格調ある展開です。次の展開難しそう。夏の句をお願いしました

 

戦乱の時鎮まりて浮いてこい  佐藤

 

う、上手い!「浮いてこい」は水遊びのおもちゃです。小さな人形で水の底からブクブク浮いて来るのがおもしろい、とか。前句の格調ある修羅モノの世界を踏まえ、水遊びのおもちゃという、ささやかなものを見出した感性がすごい!

愛らしい人形の姿に「海ゆかば水漬く屍、山ゆかば草むすかばね」の大伴家持の歌にあるような、数知れないやり場のない思いが、やっと光へと昇ってくるようなイメージが泣かせます。

最も小さなものに顕現する大いなるものの影。  凄い。

 

空の紺碧代田に落とし  正藤

 

明るい田園風景に転じつつも前句までの思いもしっかりと受け止めた、極上の付け。

田植え前の水を張っただけの代田に映る空の、何という青さか!。

感動的に始まった名残の表、次は無季の句で、とお願いしたら集まったのは、恋の句ばかり。おまたせしました。恋、まいりましょう。

 

新装の蟋蟀橋に手をつなぎ  笹次

 

山中温泉の名所のひとつ、渓谷にかかる蟋蟀橋が架け替えられたところなんです。時事を踏まえて一番大人し目な恋の句をいただきました。

 

逢えばまたすぐ逢いたくなりて  中江

 

さらりと次へ渡す付け。こういう句も必要なんですよ。

 

さて次回は十二月になりますね。どんな展開か楽しみ

 

 

f:id:orcamike:20191019114942j:plain

お茶の花 十月の連句

歌仙「桐一葉」の巻

今月は初折裏の七句めから。そろそろ月の出るころ。

 

七句目 お薬師の九輪にかかる冬の月  中江

お薬師様と呼ばれるお寺は各地にあります。ここ山中温泉にもあります。その塔の頂きの九輪にかかる冬の月。煌々と冷え寂びて。 オーソドクスな冬の句。

 

八句 散るものもあり咲くものもあり  正藤

 

いかにも連句の遣り句らしい、さらりとつなげる一句。

 

九句 飛び石を一つ飛ばして着地して  佐藤

 

前句の気分を受けて感覚的に付けた無季の句。うまい。さて、そろそろ花の定座に向かって春の句をお願いしましょうか。

 

十句  青きを踏みてこれからのこと  中江

 

花の前、初春の季節感にあふれたきれいな付け。前句の着地した後の足元に目をやって、それから未来へ目をやる。春は始まりの季節ですものね。

 

花の座 長堤の大島桜日のかげり  笹次

 

大島桜は日本の桜の原種の一つです。固有種です。葉も大きく、樹高も高めで野趣がありますね。長堤は、一読、墨田川の墨堤か、と思いましたが、大島桜の名所の堤かもしれませんね。文字通り丈高い花の句。

 

十二句 師の忌を修す春雨の径  正藤

百名山」で有名な深田久弥加賀市の出身ですが、その忌3月21日を毎年、有志の方々が修していらっしゃるのだそうです。もう49回だそうです。詩を思いつつ辿る春雨の小径。思いの深いものがあります。

 

さてこれで初折裏も終わり来月はいよいよ名残にはいります。