立秋も過ぎ、暑さもピークを過ぎた八月、新たな歌仙がはじまりました。
芭蕉の館のお庭を眺められる部屋に、紫深い鉄線の花。きりっとした花容が涼しげです。
まずは発句
桐一葉きのふと違ふ今日の風 斉藤
古今集秋の部
秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる 藤原敏行
の歌のとおり、秋風の音には独特のひびきがあります。気温が高くても秋の風だとちゃんとわかりますね。そして、「桐一葉落ちて天下の秋を知る」は、淮南子かなんかのことわざですね。季節の巡りを知らせてくれる先駆けのものを二つも並べて、今日という特別な日に挨拶してくださったのでしょう。
脇は
秋の蛍の落ちし辺りを 橋本
暗い付け。
第三句 うす雲を透し明るさある無月 正藤
暗い付けを、無月といっても雲を透して明るさが見えますね、とやんわりフォローしてくださいました。さすが巧者。
第四句
草の穂絮の湖畔に揺れて 平井
湖畔に出て、秋風の草の穂の揺れるのを見る。月を眺めるそぞろ歩きのついでかもしれません。景色が変わりちょっと気分も変わりました。
第五句 人声の近づいて来る船溜まり 中江
琵琶湖の、ボートやヨットなどの繫留されている
桟橋が目に浮かびます。人間が現れて物語が展開しそうです。
六句目
照らすライトに浮かぶトランク 平井
港の光景になったようですね。桟橋か甲板か。ライトに浮かぶ使い込まれた古いトランク。旅への誘いが出たところで、今月、の「桐一葉」の巻初折は終わりました。どんな旅になるのか楽しみです。