かがなべて

言葉遊びと、毎月の歌仙など

九月の歌仙 名残の裏

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歌仙「雛の家」の巻満尾

名残の裏

路地裏にパン焼く匂い朝の風  中江

 

名残表の最後の句がいかにも乾燥して寒そうな冬ざれのくでした。冬は、パンを焼く匂いが一入懐かしく良く匂いがする時節ですよね。

 

 晴るる兆しの西空あかり  正藤

 

ここ北陸でもお天気は西から変わってゆくと言います。まぁ、日本列島の位置からして西から変わるものでしょうら。冬の灰色の空もすこしあかるくなってくるころ。

 

雪のひま少し顔だす道祖神  佐藤  

 

雪の隙は春の季語です。樹木の周りなどから雪が解けて隙間ができる。雪深い土地ならではのきごですね。道祖神は信州の道が有名ですね。深い雪が少し溶け出して道祖神の顔があらわれた。のどかで温かみのある一句

 

空の青さと競う芽柳  正藤

 

こちらの連句会ではいつも投句が多くて選ぶのに苦労するのですが、歌仙も名残の裏まで来ますと、さりぎらいにひっかかるものがおおくなってきます。それが難しいですね。名残の裏はさらさらと、といいますから、きれいな自然詠をいただきました。

次が、花の定座ですから、本来は植物の季語は避けるところかもしれませんが、古今集にも載っている有名な歌、にもあります。

 

 みわたせば柳 さくらをこき交ぜてみやこぞはるの錦なりける  素性法師

 

花盛りの京を遠望して詠んだうただそうです。百人一首にも

はいってますね。柳・櫻は御縁というものとしましょう・。

 

福耳のをとこについて花の山  笹次

 

いいな、おもしろいな。名残の裏の花の座は「ことほぎの花」とも言われ、めでたい気分で終わるのが良いとされますから、福耳の男について花の山を巡るのは素晴らしい発想だと思いました。

この福耳男さんは、じつはお釈迦様なのじゃないかしら。

さて最後一句は

 

絵馬をならして強東風過ぎる  正藤

 

さまざまの願いの記された絵馬をカタカタとならして吹き抜ける一陣の風。願いは天神様がみそなわしてくださることでしょう。動きがあって季節感も濃厚で、いいくですね。

さてこれで「雛の家」の巻も満尾です、

来月からはどんな歌仙が巻けることでしょう。楽しみです。