かがなべて

言葉遊びと、毎月の歌仙など

歌仙「菊たけなは」の巻

砂利道に咲くすみれ。可憐!

二月は大雪、三月は休日にあたるなどで、久しぶりの歌仙です。名残の表に入りました。花の定座から行く春を吉野に惜しんだ後、まずは無季の長句

 

ぼろ市に転がりてをり涙壺   元田

 

涙壺は独特の形をした壺ですね。オリエントのものが良く知られています。続いて無季の七七。

 

飛行機雲の尾の消え初む   佐藤

 

前句の打ち捨てられた涙壺のもの哀れさをうけて、そこはかとなく哀感があります。

次は夏の句へまいりましょう。

 

鷺の首伸びて縮んで青田波  中江

 

風に波立つ田んぼの緑の中を音もなく移動する鷺のすがた。よく観察してますね!飛行機雲の消えた空から舞い降りた鷺。

 

怺へきれずに滴り落つる    正藤

 

「滴り」は夏の季語です。岩清水などのしたたりに目がいくのは夏ですよね。涼し気なものです。ながめていると、小さな水のふくらみがみるみる大きくなって丸くなって落ちてゆく。子供のころなど良く眺めたものです。

つぎはまた無季を挟んでもらいましょう。

 

夕づきて子らいづくへか失せてをり  笹次

 

夕方の気配がし始めて、ふいに、それまで遊んでいた子供らがいなくなっているのに気づく。季語がないから無季ですが、どこか暮れ速い秋の気配を思わせる一句。

それにしても初折の恋もほとんど気づかないくらい淡かったのに、名残の裏になっても恋にならないとは…。

季語はないから無季ですけど、暮れ早い秋の気配