会場の芭蕉の館の庭の紅葉が驚くほど美しい日でした。ほととぎすの巻も、ついに名残の裏。
一句目は無季の句
磯釣の沖の巨船の動かざる 笹次
二句目も無季で、とおねがいしました。
籠軽くして歩みのおもし 正藤
キノコ採りか山菜取り?前句が磯釣りですから、釣果がなかったってことでしょうかしらね。名残の裏は、さらさらと淡々とはこんでゆくものだそうです。さて三句目は。
まどろみて開きしままの文庫本 中江
無季ではありますが、どことなく春めいた気分の一句。いい感じです。
ふわりと反故の夕東風に乗り 橋本
前句ののどかで優しい雰囲気をつないでいます。次はついに花の上座です。
前撮りの母子のいこふ花筵 笹次
満尾を前にした寿ぎの花の上座にふさわしい句ですね。
正装の母と娘に散りかかる花びら。美しく、大きな喜びに包まれながらも、大きなことをやりとげてしまったことへの一抹の喪失感もあって万感むねせまる、というかんじですね。
ところで結婚式の写真の前撮りって、このあたりの風習でしょうか。どこでもするの?
さていよいよ最後の句です。
橋三つ渡り春惜しみけり 佐藤
山中温泉は、写真の渓谷臨んでいますから、橋もいくつかあります。黒谷橋、あやとり橋、こおろぎ橋と遊歩道に沿ってめぐりつつ春を惜しむ。
発句の山中の景へと回帰する、見事な大団円でした。