枝ぶりも葉っぱも、とてもきれいなこでまりですね。感心しました。白糸草も寂しげな花ですがほのかな香りがたたずまいによく似合って味わい深い。
さて、今月はいよいよ名残の表にはいります。先月は「奥の細道春日傘征く」と旅への憧れが出ていましたから、旅の気分で無季の句をお願いしました。
名残表
ウクレレの指しなやかに湯町暮れ 笹次
旅の宿で、ウクレレを弾いている人。無聊をなぐさめているのでしょうか。旅にある身のそこはかとないもの憂さ。一抹の哀感がかんじられます。これもまた旅情というもの。
もう一句無季で、七七お願いします。
本格珈琲豆より挽いて 佐藤
さりげない、本当にただそれだけのこと、みたいな付けですが、しかし、旅の途中でふと立ち寄った、カフェが、雰囲気の良いお店でコーヒーもおいしかったりすると、忘れがたいものですよね。あの町の名前も忘れてしまったあの店のコーヒーおいしかったな、と後々まで記憶に残ったりするものです。
さて、三句目は夏の長句をおねがいしましょう。
軋みては現に戻る籐寝椅子 正藤
いいですね、夏の午睡。籐の寝椅子にまどろみながら、そんなに深く眠るわけでもないけれど一時この世をはなれて無可有郷に遊ぶ。こちらも一つの旅かも知れませんね。
付けの夏の七七は
蛍火にゆれ動き出す山 元田
いい付けですねー。蛍火の夢幻的は様子を、その背景に黒々とそびえる山のほうが動き出すと表現した。詩的です。前句の夢うつつの気分を見事に抑えて、かつ美しい。絶妙の付けをいただきました。
さて、今回は、投句数が多く秀句も多くて選ぶのに悩んで時間がかかってしまいました。出勝ちでこんなにたくさんの投句の中から捌かせていただく連句の会なんて、ほかにないのではないかと思います。来月も楽しみです。