かがなべて

言葉遊びと、毎月の歌仙など

六月の歌仙「山眠るの巻」

今日の連句会に発表された句句。これだけの投句から選ぶんですから、面白くないわけがない!
 さて、名残の表の中ほどです。そろそろ「恋」もまた欲しいころ。

 

第5句  夕暮れに口笛吹いて罪と罰    元田

合図の口笛を吹いて誘い出す夕暮れの恋人は、ラスコーリニコフのような苦悩に満ちた瞳の青年なのか。難しい恋の予感がします。

 

第6句 ゴリラの気持ちわかるこの頃    平井

 

なんと!罪深い恋かと思ったらゴリラの気持ちが分かるとは!

ひたむきなのはわかりますが。いやはや奇想天外の恋。

無季の句を2句はさんでそろそろ秋の句にいたしましょう。

 

第7句  コスモスや囁き合うて頷いて   正藤

 

優しい秋の句。それでも「富士には月見草が良く似合う」ようにゴリラにコスモスもなかなか似合うと思います。と、言ったら、作者が「似合うと言われてもうれしくない」とつぶやかれたので、思わず笑ってしまいました。

 

第8句 刈田の案山子片付けぬまま   小林

 

刈り入れのすんだ田にぽつんととりのこされた案山子。淋しそうです。ついこの間まで、黄金に揺れる稲穂の波を守っていたのにね。

「刈り」「案山子」「片」とかさねられた乾いた「カ」の音が案山子のカクカクした感じを印象づけます。

 

第9句 峡の日の銀杏紅葉へ移り来し  中江

狭い谷の空を秋の日はみるみる移動して銀杏の木へ届いた。金色に色づいた銀杏紅葉はスポットライトが当たったように輝く。美しいです。

来月は名残の表も終わりになりますね。月の座がまっています。