かがなべて

言葉遊びと、毎月の歌仙など

歌仙「新涼の風の巻」九月

文台に乗せたけど筆を忘れて

朝夕はすずしくなってきました。暑さ寒さも彼岸までとはよく言ったものです。

句を書き記すべく、巻紙に絵も描き添えたのに、筆を忘れちゃったんですよねー。

さて、初折の第九句目は

 

 空見上ぐ紙縒で作る指輪して   佐藤

 

結婚への憧れもないではないけど、ごく仄かな願いとして秘めた恋なのでしょうね。

十句目

 豈はからんや長きつきあひ   井上

 

なんとなく付き合い始めて、気がつくと思いがけず長い時が立っていた。そういうものですよね。激しく燃え上がる恋は、やっぱりすぐ燃え尽きますものね。

十一句目花の座です

 花の舞光と影に人を見し   平井

 

目くるめく落花のなかに立ち上がる面影は、永遠の恋人の姿か。初折の裏の最後は

十二句

春果てしなり我が愛でし日々  正藤

 

うーん

さて、名残の表へまいります。無季の句

 

靴紐を変えるばかりの旅支度  橋本

 

恋が終わって今度は旅。

 

二句目

人の往き交ふ走り根の道  小林

 

木の根の走っているのが見える、そんな道でも人が行き交っている。確かにかなりの登山道でも人がいっぱいの昨今です。次は夏の句をお願いしました

三句目

貴船にて友と集ひし鮎料理   井上

 

走り根、つまり木の根。木の根道といえば鞍馬か貴船。実際にお友達と貴船の川床に遊んだ思い出の御句だそうです。

四句目

 青鬼灯の形定まらず  佐藤

 

まだまだ小さな鬼灯なのでしょうね。山村の道野辺にありそうです。

五句目

若人の装ひ十色園めぐり   正藤

 

庭園をそぞろ歩く姿も若い方方はカラフルで、緑の中の花のようですね。明るい印象の句です。。

六句目

石踏み渡り珍獣探し  平井

 

公園の敷石か飛び石か。げんきよく歩き回りながら珍獣探しの遊びをしている。ポケモンかな。

七句目

老易く学成り難し秋の暮れ  小林

 

ポケモンで遊んでいた少年もあっという間に老いて、すでに秋の暮れ。淋しい。

 

八句目

スケッチブックの街冬隣  橋本

 

「秋の暮れ」という季節感の後は「冬隣」しか思いつけなくて…。

九句目

縁側の筆立てにあるひ孫の手  佐藤

 

ひ孫の手、とはまごの手の小さいもののことだそうです。

もっとも本来は「孫の手」ではなく「麻姑の手」だそうですけどね。長い爪の仙女だそうです。

十句目

なにをさがしに夕風の中  井上

 

何を探していたのか忘れるということも実際ありますが、こうして書き留めると人生に、何を探し求め続けるのか、という哲学的な問いも聞こえますね。

十一句目月の座

 

漣に歪み耀やふ冬の月   正藤

 

きれいな一句で、時間となりましたまた来月です。。