先月会場の都合で初折五句目「夏の月」で終わっていた歌仙。
まずは初折の最後、六句目
コロナに揺らぐ列島極暑 正藤
うう、熱いですね。夏にはパンデミックも収まっていると良いのですが。時事を読み込むのも、実際に顔を集めて巻く歌仙の愉しみの一つです。
さて初折の裏へまいります。
人声は国境線の辺りより 平井
世界的な新肺炎の蔓延という状況ををおさえた付け。陸続きの国境線は管理も大変なことでしょう。ヨーロッパはペストなどパンデミックの経験があるからか対策も厳しいですね。さて次の句は、
港の灯りほつほつ点る 佐藤
前句の光景から旅の気配を抽出して抒情的に持ってきました。つぎは秋の句
散居村つなぐ稲穂のたおやかに 中江
散居村の光景は美しいものですね。田んぼの中に屋敷林を持つ立派な農家が一軒一軒散在する、ちょっと描いてみたいような景色です。
たおやか、ということは、まだそれほど身が入って重くなり枯れ色になってきていない微妙な時期の稲なのでしょう。
古酒の大壺空っぽにして 佐藤
新酒が出る前に古酒を片付けねばならぬ、ともったいらしく大酒を飲んでいる。おもしろいです。富山県の穀倉地帯の豊の秋を詠んだ前句を受けて、実りの秋に新酒を待つ気分良い付けですね。次はせっかく秋なので月の句を所望しました。
正座して文机低し居待月 正藤
格調ありますねー。正座して文机に月を待っていらっしゃる。文机が低い、というのも時代を感じさせます。明治文豪の雰囲気ですね。
正岡子規の机も低かったな。
銀杏黄葉へ日の移り来て 中江
秋の日らしく明るく静かな光景。銀杏はあまり普通のお家の庭にはありませんね。前句の格調の高さに似合うかと思います。加賀市の深田久弥 山の文化館の
庭にも大きな銀杏があって紅葉がそれは見事です。
これで初折の裏の半分まで来ました。来月はどんな展開になるか楽しみです。