コロナ禍の中、歌仙を巻くのは不要不急ではないと信じる風狂の志士があつまりました。さて、六月は 花の定座。お花見に、木の芽田楽を食べている下戸の人物が現れました。お酒の出る席は、私もあまり好きではありませんが、花を眺めながら、まったく飲めないのは残念でしょうね。
名残に入って一句目
ほっこりと寺の門前掲示板 中江
何か優しい言葉が書いてあったのでしょうね。世の中に何となく居場所のないような気分の時、何でもない言葉にホッとしたりするものです。
古書の埃を吹いて日暮れて 橋本
せわしない現代に、古書を漁ったりするのは、とんだ 時代錯誤かもしれません。お寺の掲示板を眺めてほっとしたりするのは、どんな人かな、という流れ。
曇天を押し上げている合歓の花 正藤
夏の長句。合歓の花、きれいですよね。日が暮れると葉をたたむ、感じやすい植物みたいな印象を持ちますが、この句は一般的概念を打ち崩す、たくましい合歓の花。
夏手袋を小脇にかかえ 佐藤
合歓の花といえば奥の細道の忘れ難い一句「象潟や雨に西施が合歓の花 芭蕉」が思い出されます。薄倖の美女のイメージです。夏手袋の麗人はそれを小脇にして颯爽とおでかけのようですね。
今日もまた意中の人とすれちがい 平井
夏手袋の麗人はあこがれの、意中の人だったのですね。夏手袋は、恋の小道具にすごくいいですね。
東京駅の雑踏に消ゆ 中江
どんな雑踏の中でも、好きな人はすぐ見つけられます。顔が良く見えないくらいの遠くからでもわかるのは、不思議ですよね。意中の人は東京駅の雑踏へ。遠く旅立ってしまうのでしょうか。どうなるこの恋!